CRUX200MF+TitanTCSとPHD2を使用して高精度にガイドをしたいがどうすれば良いかを検討してみました。
高精度ガイドと言ってもどの程度の精度を目標にするのかで色々とあるように感じます。そもそも使用している赤道儀の精度も影響するでしょうし、制御装置での精度も関係するように感じます。当然カメラやガイド鏡の精度も。以下の検討は単なる趣味程度での評価をするだけですので、そんなもの程度に捉えて頂ければとおもいます。ある程度は定量的に見ていますが、如何でしょうか?
1)ガイド鏡
以前検討したエアリーディスクと点像分布関数面(3σ)で見たいと思います。
ガイド鏡はSQA55で口径55mm、FL:264mm、F:4.8
エアリーディスク:1.22 x (540/1000) x 4.8 → 3.16 μm
点像分布関数での3σ(有効エアリーディスク):3.16 x 3/4 → 2.37 μm
この有効エアリーディスクは角度としてどの位か評価してみます。分解能的に見ると言った意味合いです。
2021/11/21 追記:±3σを 単に 3σ に記述訂正しました。
ここでdが有効エアリーディスク径:2.37 μm、FLが焦点距離:264mm
シータの角度は
ラジアンにして θ= (2.37/1000) / 264 =0.00000898 : 1.85秒角(1rad:206265秒)
この角度が対象側の分解出来る角度と見做せると考えます。
ところで、ガイド鏡のSQA55は口径55mmですから、分解能(ドーズの限界)を見てみます。
ドーズの限界(秒)= 115.8 / 口径(mm) → 2.1 秒角
この分解能は、上記のエアリーディスクからの角度より大きいですから、結局はSQA55分解能面ではドーズの限界レベルになると考えます。見方としてはSQA55では分解能レベルに離れた星は焦点面では2つに分離して現れているのではと考えられます(シンチレーション影響は除く)。
ここで大気のシンチレーション(シーイングと言った方が良いかも)で揺らぎが乗り、星の点は動きます。シーイングの情報としては日本天文学会「天文学辞典」で日本では2秒角程度との情報があります。言い換えれば点である星が2秒角内で移動しており、中心から1秒角の円内で振れているとも言えます。この1秒角内での振れはSQA55としては、ドーズの限界内であるのであまり振れているようには見えず点の状態に近いと言えます。
しかし、富士ヶ嶺でSQA55+PHD2でASI290MMでガイドしてPHD2の参照星像をみているとブレていました(赤道儀の振れも有りますが)。場所的に富士山や他の山も近いですので、色々と上空の気流は他の地域より不安定で揺らぎも大きいと思います。そこで富士ヶ嶺での考察として富士ヶ嶺でのシーイングは大きめとして仮に3秒角(1.5倍)で考慮します。これは、シーイングで星の位置が中心から1.5秒角の円内で移動しているいるので、SQA55でも星の移動が認識できるレベルで焦点面での星の移動と認識できると思われます。
ここでカメラでの露出時間を加味して考えると
短時間露出(1秒以内か):星がシンチレーションで露出毎に移動しているようになる
中時間露出(数秒程度か):星はシンチレーションの影響平均化されやや大き目な像となる
ガイドする際にシンチレーションを意識するか(露出を短く)、平均化するか(中時間露出)、何方が良いのかはこの時点では決めかねる感じです。短めの露出はシンチレーションの影響の為本来は補正は不要かも知れないので、ガイド不良(過剰補正的になるのでは)と思われます。ただ不要ガイドの排除を考えると、ある程度はシンチレーションを吸収した星像で見た方が良いのではと思います。
尚、星像の大きさは
短時間露出:有効エアリーディスク径(±3σ) 2.37 μm 2.37 x 2 = 4.74μm
中時間露出:シンチレーション秒角:3秒角 3.84 μm
2024/11/21 追記
3秒角:3/206265 = (x/1000) / 264 → x:3.839×10-6 :3.84μm
‐‐ 追記終わり
また、ここではガイド鏡での移動ですが、メイン鏡での考察も必要なのではと考えます。
2024/11/21 追記
ガイドは赤道儀の追尾エラーを補正するためのものであると考えると、シンチレーションの補正までやってしまうのは本来のガイドでは無いと思います。従って、あまり短い露出ではシンチレーションの揺らぎを拾ってしますので、良くないと考えます。上記の数値では実質面は有効エアリーディスク径が大きいので、揺らぎはこの径の中に収まるのではと見えます。しかし、実際には揺らぎで本来の星の位置がずれるので、収まるわけではないですね。云わば露出で有効エアリーディスクが大きくなるだけだとは思います。
‐‐ 追記終わり
2)メイン鏡(TOA-130NSとして)
前回考察したようにTOA-130NS(FL:990mm、F:7.6)では、
有効エアリーディスク:7.5 μm
角度としては、θ= (7.5/1000) / 990 =0.00000756 : 1.56秒角(1rad:206265秒)
但し、 ドーズの限界(秒)= 115.8 / 口径(mm) → 0.89秒角
ここでは、ドーズの限界よりのエアリーディスクからの面で考察するとして、1.56秒角内の振れは分離出来ないとすると、通常シンチレーション(シーイング)ではTOA-130NSでも分離されず星は点像レベルと思えます。富士ヶ嶺での状態では性能から揺らぎを感じると思われます。但し、TOA-130NSでの撮影は短くても5秒であり、殆どが数10秒以上であるなので、シンチレーションにより平均化された点像の星像になると考えます。点像でも標準的な2秒角では、9.6 μm。想定シンチレーションによる3秒角である14.4 μm程度の像と思われます。
2024/11/21 追記
2秒角:2/206265 = (x/1000) / 990 → x:9.559×10-6 :9.56μm
3秒角:3/206265 = (x/1000) / 990 → x:1.4398×10-5 :14.39μm
— 追記終わり
メイン鏡での露出を考えるとシンチレーションが平均化された状況になるので、ガイド鏡での露出はシンチレーションの影響を受けない(又は吸収される)露出の方で良いのではと考えられます。
2024/11/21 追記
こんな事を書いてこの情報を見ると、990mmでの撮影では精細なピクセルサイズのカメラを使ってもあまり意味無いような感じがしてきました。要するに、シンチレーション補正するようなAO(Adaptive Optics:補償光学装置)を使った環境でないと難しいですね。
TOA-130NSでの撮影画像では、どうも星像が大きいな(複数チップ感光で大きくなっている)と感じていたのですが、このシンチレーションでの影響と露出時間を考えると結局大きくなるのでは感じます。以前のSgr A*の撮影で点像を期待したのが間違いで当たり前の現象だったのかもと感じます。もっと最初に評価していれば良かったと感じます。
因みに100mm程度の望遠鏡で評価すると
2秒角:2/206265 = (x/1000) / 100 → x:9.6962×10-7 :0.9696μm
3秒角:3/206265 = (x/1000) / 100 → x:1.4559×10-6 :1.456μm
機種 | FL(mm) | 有効airy disc径 | シンチレーション 2秒角 | シンチレーション 3秒角 |
TOA-130NS+645FLT | 990 | 7.5μm | 9.6μm | 14.4μm |
VSD90SS | 495 | 5.4μm | 4.8μm | 7.2μm |
SQA55 | 465 | 4.7μm | 4.5μm | 6.8μm |
FMA180 Pro | 180 | 4.4μm | 1.8μm | 2.6μm |
FCT-65D+FURD | 460 | 3.9μm | 4.5μm | 6.7μm |
どこか間違えてるのかなあと感じますが、どうでしょうか?
AOは無理ですが、若しかしたら1秒程度の短時間撮影(ラッキーイメージングでしょうか?ゲインを上げないとダメでしょうね)の方が良いのかも知れません。撮影枚数が超多数になるので厄介ですが。
少なくとも、FLが長い時は有効な手段ではと思います。
‐‐追記終わり
このような上記の考察から、ガイド精度はガイド鏡側の条件で決めても良いと考えます。
2021/11/21 訂正
エアリーディスクの大きさに関して、半径なのか直径(星像に相当)なのか混在して考慮している点を訂正しました。
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